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鬼のパンツ

投稿者: 2007/01/31 02:20:59

1. 鬼のパンツ

2007年1月30日 大安。
その日の早朝、千ちゃんは節分飾りのヒイラギと
イワシの干物を玄関に飾っていて
こりゃなんだ?と付属していた金の玉を見た時
どこからか小さな叫び声が。

「千ちゃぁ〜〜〜〜ん、来てぇ〜〜〜〜〜!!」

げげぇ、メイカちゃん!?平日に!?仕事どうなるのよっ!!
千ちゃんは心で泣きながら、メイカちゃんに呼ばれるままに
金の玉に吸い込まれていく。
にゃんこさんに「うらぎりもの〜」と一言残して・・・。

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「千ちゃん助けてーーー」

ドカンと落ちたら、側からメイカちゃんの叫び声。
千ちゃんが痛むお尻を抑えながら目を開けると
目の前に金の目玉をギョロつかせた厳つい大きな顔が
憤怒の形相で睨み付けている。

「お、お、鬼!?のコスプレ!?・・・じゃないよねっ!!」

千ちゃんはメイカちゃんを鷲掴んで逃げようとするも
「ムギュッ」と後ろ首を掴まれあえなく失敗。
恐怖にビビりながら振り返ると、そこにはやっぱり怒った顔の赤鬼が。
「千ちゃん・・・(泣)」情けない顔のメイカちゃん。
でもとりあえず2人でジタバタしてみても
太い鬼の腕はびくともしない。
赤鬼は更に怒った顔を近付けてきた。

「そう簡単に逃がすか。おまえらがパンツを盗んだんだろ!」
「もう節分なんだっ!パンツは何処だ!!」

はっ!? パ・ン・ツ???

静かに視線を下げる・・・あ、八つ手の葉っぱで隠してる。
もう一度視線を上げると、恥ずかしそうな鬼の顔。
もう一度視線を下げる・・・やっぱり葉っぱだ・・・

・・・・・。

「千ちゃん・・・この人パンツないの?」
「ぷっ、くっ、ヤバイね(←笑いを堪えている)」

「ふ、ふ、ふざけるな!!何度も見るんじゃねぇ〜」
「このハレンチどもが、さっさとパンツ返せ!!」

恐ろしい顔をしながら、しかし更に真っ赤になった赤鬼が
大きな体でモジモジと近付いてくる。
なんか・・・逃げようにも怖くないんだけど。
千ちゃんとメイカちゃんがどうしようかと視線を交わした時
どこからか変な歌声が。

鬼のパンツは くさいパンツ
におうぞ におうぞ

同じパンツを 穿いている
におうぞ におうぞ

10年はいても 洗わない
くさいぞ くさいぞ

100年はいても 洗わない
くさいぞ くさいぞ

捨てろ 捨てろ 鬼のパンツ
捨てろ 捨てろ 鬼のパンツ

あなたも あなたも あなたも あなたも
みんなで捨てろ 鬼のパンツ♪

「千ちゃん、鬼ってパンツ洗わないの?」

真っ赤になって固まった鬼に
メイカちゃんの止めの一言が。

ぶっ、ぶはははははははははーーーーー!!
ダメェ〜耐えられない〜!


「・・・と、と、とりあえず、私達よりあの歌の方が怪しいですよ?ブハッ」
「うん、メイカ達知らないよね〜ブハハハ」

しかし我に返った鬼が真っ赤になって叫んだのは

「俺達は毎日洗濯している!!くさくない!!」

あ、ポイントはそこ?

投稿者: 2007/02/01 02:18:56

2. ダメなパンツ

「千ちゃんお腹空いたね・・・」


千ちゃんは涙目のメイカちゃんを頭に乗せ
あの変な歌声が聞こえた方角に向かって山裾の獣道を歩いている。
前には赤鬼が、後ろには青鬼が、逃げ出さないようギロリと睨んでいる。
大きな身体でモジモジと・・・。

本当なら解放されているはずが、お前らは犯人かもしれないから
牢屋に入れておくと言われ、ついつい「そんな格好で走ったら恥ずかしいですよ」
などと生意気なことを言ったばかりに
大事なものを人質にされてしまった。

大事な物・・・スイカパパとメロンママのバッジ。
返してもらうには、なんとか犯人を捕まえるしかなさそう・・・。

「メイカちゃん、もう少しだからがんばろうね」
「うん!」

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冬にしては小春日和。梅の花もちらほら見えど、気持ちが急いて余裕がない。
「あの・・・もう少し早く歩きませんか?」
「うん、メイカお腹が空いちゃったし、犯人が逃げちゃうかも」

「ふざけるな!大股開きで歩いたら恥ずかしいだろうが!!」
でも赤鬼は更に赤くなって、青鬼は赤・・・いや、紫色になって
怒鳴るだけ。で、やっぱりモジモジ内股で歩くだけ。
なんともまだるっこしい。

「あ、千ちゃんあれ何??」
メイカチャンの指さす方を見ると小さな小屋に白いもの。
「ん?ああ、トイレットぺーぺーかな?山に来た人用のかな?」
「ねぇ、あれ長いの?腰に巻いたらどうかなぁ〜?」

え!?

「おう!これならフンドシ代わりになるぞ!!」
いや、それは・・・と千ちゃんが否定しようとする前に
盗み聞きしていた鬼達が喜んで飛びついた。
するとまた不思議で失礼な歌声が。

きみのパンツは ダメパンツ
弱いぞ 弱いぞ

トイレットペーパーで できている
弱いぞ 弱いぞ

2分はいたら 破けちゃう
弱いぞ 弱いぞ

はいたとたんに 破けちゃう
弱いぞ 弱いぞ

ぬごう ぬごう ダメパンツ
ぬごう ぬごう ダメパンツ

あなたも あなたも あなたも あなたも
静かにぬごう ダメなパンツ♪

ダメパンツ?ふと鬼達に視線を向けると
破れても必死にトイレットペーパーを巻いている姿が。

・・・・・。

ぶっ、ぶはははははははははーーーーー!!ダメェ〜耐えられない〜!

「・・・と、と、とりあえず諦めて、逃げられる前に追い掛けません?」
「うん、犯人逃げちゃうかも〜ブハハハ」

しかし我に返った鬼達が真っ赤になって叫んだのは

「俺達の葉っぱを取ってくれ!!早くしろ!!」

あ、やっぱり恥ずかしい?

投稿者: 2007/02/01 22:59:00

3.蟹のパンツ

「犯人、捕まえられなかったね・・・」
「わたしとメイカちゃんだけなら走れたんだけどね」


結局まごまごしていた鬼達のせいで、あの変な歌声の人を見失ってしまった。
チラっと見ると、気まずいのか赤鬼と青鬼は
うつむいてモジモジと歩いている。
気がつけば山裾を抜けて海岸へ辿り着いていた。

***********************************************

「うわー、海だよメイカちゃん。泳ぎたいね〜」
「うん、気持ちいいねぇ〜」


今日は天候が穏やかなせいか潮風も気持ちがいい。
「波でチャプチャプしたい〜」と言うメイカちゃんの声に2人で
思わず波際に近付こうとすると、「ちょろちょろ動くな!」とまた鬼の怒鳴り声。
振り返ると潮風に煽られてピラピラしている破れたトイレットペーパーと
葉っぱを必死に抑えて内股になった赤鬼さんと青鬼さんが・・・。

「もう・・・それじゃ犯人が見つかってもどうやって捕まえるの?」
すかさずメイカちゃんも「う〜ん、貝とか人魚さんみたいでいいよね〜」
「小さすぎだよね・・・」とチラッと見れば、鬼達は真っ赤になって
「見るなよ〜」と更にしゃがみ込む。
う〜む、恥ずかしがっている。

「じゃ、あれは?」とまたもや何かを発見したメイカチャンの指す方を見れば
少し離れた場所に波に打ち上げられたのか赤い物体??
それに気がついた鬼達はすがりつかんばかりの勢いで走って行く。

「お、蟹の甲羅だ!!」
「これなら大きいし、フィット感も良さそうだな!!」


鬼達がお尻を出しながら急いで付け替えていると
またもや変な歌声が・・・。

蟹のパンツは硬いパンツ
痛いよ 痛いよ

かにの甲羅で 出来ている
痛いよ 痛いよ

5年はいても 刺がある
痛いよ 痛いよ

10年はいても なじまない
痛いよ 痛いよ

脱ごう 脱ごう 蟹のパンツ
脱ごう 脱ごう 蟹のパンツ

あなたも あなたも あなたも あなたも
みんなで脱ごう 蟹のパンツ♪

ん、近くから聞こえてくる?


「千ちゃん、あの岩場の方!」
「うん、鬼さん達、あそこ!!」


急いで鬼達に知らせ、歌声の聞こえてくる岩場まで
皆で走って裏側に回り混む。
つもりが、鬼達はいきなり前屈みに止まって、動かなくなってしまった。

「痛っ!待ってくれ!」「痛たたたたたたっ!刺が!!」

鬼が涙目・・・・・だめじゃん。

投稿者: 2007/02/03 02:01:31

4.鬼のパンツ

変な歌声は楽しそうで、まだ見つかったことには気付いていないらしい。
前屈みに必死に蟹のパンツを脱ごうとしている鬼達はさっさと見捨てて
メイカちゃんと千ちゃんは走りながら目線で合図を取って
退路を塞ぐように岩の裏側に。

「あっ!」

やっと気が付いたのか、慌てて波際の方へ逃げ出した後ろ姿は
メイカちゃんそっくり!!

「待って!!」

もしかして、メイカちゃんの兄弟なんじゃ!?

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パチパチと目の前にたき火がはぜている。
少し遅い昼食にアジを火にあぶりながら、みな一ケ所に視線を向けていると
メイカちゃんのそっくりさんはうつむいて
「わたし妹のシータ・・・鬼のパンツは・・・」
とぼそぼそと話し始めた。

犯人は・・・シータちゃんだった。まだまだ朝夕は寒くて眠れなくて。
たくさんの毛皮のパンツが干されてるのを見てつい魔がさしたらしい。
シータちゃんは視線を合わせないよう、でも怖い鬼の顔を伺っている。

「でもねぇ・・・事情はわかるけど、あの歌は?鬼さん傷付いていたよ?」
「でも、シータ・・・そんなの知らない・・」
「でもじゃない。知っていて、いたずらが楽しくなっちゃったんでしょう?」
メイカちゃんが黙り込むシータちゃんの手を取って
「そういう時はね、ごめんなの。ほら、ごめんて」
優しく教えてあげたら、シータちゃんは泣きだして
「ごめんなさい〜、うえぇぇ〜〜〜」

シータちゃんを宥めながら、複雑な顔の鬼達に
どうするのか視線で訪ねると


「はぁ、まぁ節分には間に合ったし・・・」
「俺達は正直に謝る良い子供は好きなんだ」


「・・・あんたにも悪いことしたな、今日は泊まって行け」
そう言ってメイカちゃんにバッジを返してくれた。

鬼のパンツは いいパンツ
強いぞ 強いぞ

トラの毛皮で できている
強いぞ 強いぞ

10年はいても やぶれない
強いぞ 強いぞ

100年はいても やぶれない
強いぞ つ強いぞ

はこう はこう 鬼のパンツ
はこう はこう 鬼のパンツ

あなたも あなたも あなたも あなたも

みんなではこう 鬼のパンツ

鬼の長老の家に集まって今日は節分前日の大宴会。
皆で楽しく『鬼のパンツ』を大合唱して
メイカちゃんとシータちゃんは「良い子にはプレゼント」と貰った
鬼のパンツで腹躍り。


そこへ酔っぱらった赤鬼と青鬼が近付いてきて
「今日は本当に悪かった。あんた達のおかげで助かった」と。

「で、あんたは鬼のパンツで一緒に腹踊りしないのかい?」

するか!この、酔っぱらいメ!

投稿者: 2007/02/03 23:19:27

5. お土産パンツ

宴も終わり、気がつくと長老の家には千ちゃんと
メイカちゃんとシータちゃんだけ。
鬼達は夜が開けると子供達に豆をぶつけてもらいに
嬉々として出かけて行った。
今日は節分。
良い子の家には福が来て、悪い子のところには鬼が脅しにやってくる。
鬼が来ないように家の玄関にはヒイラギと落花生。
イワシの干物にお腹を空かせた野良猫が。

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「じゃあ、そろそろ帰ろうか。メイカちゃん鏡はok?」
「ハイです!」
「シータちゃんも一緒に行こう。鏡はある?」

「・・・鏡はメイカにあげる」
「シータ、ここで鬼のパンツを洗いたいの」

へっ?

「昨日洗濯係の鬼さんから、鬼のパンツはドライクリーニングだから
洗濯が大変だって聞いて、シータもお手伝いしたくなっちゃったの」

ドライクリーニングだったのか・・・。

「そっか、わかった。でも1人で大丈夫?」
「・・・シータ寂しくない?」
心配するメイカちゃんに、でもシータちゃんは鏡をメイカちゃんに渡して
元気よく頷いて
「大丈夫、鬼のパンツは元気が出るパンツだもん!」
「メイカも鬼のパンツでがんばってね!」

土産のパンツは 鬼パンツ
すごいぞ すごいぞ

はくと 力が湧いてくる
すごいぞ すごいぞ

10年はいても やぶれない
すごいぞ すごいぞ

100年はいても やぶれない
すごいぞ すごいぞ

はこう はこう 鬼のパンツ
はこう はこう 鬼のパンツ

あなたも あなたも あなたも あなたも

みんなではこう 鬼のパンツ

・・・・このパンツどうしよう。
千ちゃんは土産の鬼パンツに困っていた。
夏は暑そうだし、パンツをクリーニング屋に出すなんて恥ずかしいし
スカートも穿けないし、100年も同じパンツなんてなんか嫌。

「・・・メイカちゃん、ママさんに会いに行く?」
「これお土産って渡してあげたら?」

ふふふ・・・ママさんびっくりね(ニヤリ)

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メイカちゃんはお土産パンツを持って
ドキドキしながら鏡を通ってママさんの所へ。
ようやく見えたママさんに思いっきり抱き着いた。
「ママさ〜ん!お土産があるの!」

「メイカちゃん、ごめん!!」

え?


がばっ、ドサッ、パタパタパタ、ビビーッ、ぺたぺた

ん?真っ暗??

「じゃぁ、これお願いします。優しく扱って下さいね」

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「おばごりさんのお宅ですか?お届け物で〜す」
「はいは〜い。ん?ママさんから?」

蓋が開いた途端、鬼のパンツのメイカちゃんはお土産パンツを握りしめ
涙を滲ませながら、ようやく見えたおばごりさんに思いっきり抱き着いた。

「おばごりさ〜ん!」

「この鬼メ!!」


え?


バチバチバチッ!バババババッ!パラパラパラ!


痛っ、痛たたたたーーーーー、ん?豆??

「福はうち、メイカ鬼は外じゃ〜(笑)!!」

いやぁ〜〜ん、おばごりさん、パチンコ玉が混ざってる〜!!(泣)

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